男の「金がなくとも愛してくれ」は本音であり、叶う事もない望みである

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こんばんは。ロマサラです。

前回の続きです。

前回は勢いで書いてしまったのですが、彼女にバレた時どうなるんだろうと戦々恐々としています。ですがいつかバレる前に打ち明けたいですね。

結論から言うとこれからも付き合い続ける事になったので、「はこにわ」は私と彼女の話が結構な頻度で出てくるのただの日記になると思います。

「はこにわ」という名前を決めた時に二人の日常を綴りたいと思って作ったカテゴリーだったので、いきなり改名せずに済みホッとしている次第です。

いつか二人で、家族でこれを笑いながら見返したいものです。

ーー

以前の話し合いから一週間後、僕らは池袋のEchica内のカフェにいる。
人は疎らにしか座っていない。上にある駅前のゴリラコーヒーは満席に近いのに不思議だなと思った。池袋は我々のホームタウンであると彼女も私もよく豪語しているが、この穴場を知らなかったので正直流石ホームと謳うだけはあると感心した。

私はコーヒーに疎いのでいつもカフェラテかカフェモカを頼む。未だに違いもわからない。彼女は相変わらずの甘党でマフィンを一緒に買おうか悩んでいる。

正直に言えば、今日の最後をどう迎えたいかを今でも迷っていた。だから言葉が出てこない。頭の中で浮かんでは消えていく言葉の濁流を整理するのに必死で僕らの間に会話はほとんどない。

お互いが気を使い合っているのが一瞬で掴みとれるのがわかる。昔、この近くのカフェで別れ話をしたことを思い出して、どこから湧いてくるのかわからない不安を感じた。

口を開く。

意思は変わらない。自分の好きな仕事をしたい。結婚できないと思って出会い系で新しい出会いを求めてしまった。君のことを勝手に決めつけた上に裏切ってごめん。

事実と謝罪を羅列したがここから先の言葉をどう紡げばいいかわからなかった。でも口は動いていた。

「やり直したい。どうしたら許してくれるかな?」

勝手に口から飛び出た言葉だった。でもこれは本来言うべき言葉であり、間違ってない。そんな確信がどこかにあった。

ひとしきり考えた後彼女の口から出た結論は

「わからない。言ってる事が先週と違うんだもん」

あまりにも彼女らしくて内心ちょっと笑った。君は困ると頭をウンウン悩ませた後、真剣な顔と声でいつも正直に物事を伝えてくる。

変わらない彼女のおかげで自分のペースを取り戻す。言葉を選んで並び立てる。問題が起きたプロセスと思考回路を説明していく。そして並び立てている内に気付いた。この問題が起きてしまった最初の問題は「金がなくても愛してくれ」その一言を言えなかった自分にあるという事に。

言えないまま勝手に悩んだ自分が結局君を人生に組み込まないまま、人生設計をした。その人生設計は君が耐えうるものではないんだ。だから、別れるかも。
こんなくそほど自分勝手な暴言は、自分の弱さが招いていた。自分勝手が君を困らせていた。

「金がなくても愛してくれ」は「努力をしない魅力の薄い人が高嶺の花と付き合いたい」と同じように叶うはずもない望みだ。

どちらも相手から与えられることしか考えていない。

手に入れたければ、まず相手に与える。
そんな当たり前の事を忘れていた。

私は鬱になって収入がなくなって自信を失っていた事に気付いた。以前の私は強がってでも「やりたいことやってその上で年収もある程度稼ぐ。だから見守ってて」そう大言壮語を吐く人種だったはずだ。

建前は打ち破られ、本音と向き合う。圧倒的に自分が悪い。
気付いたからには、もう戻れない。謝る。即謝る。
同時に意見が変わった事に対する思考の流れを伝える。

急に被告人になった気分だった。
彼女が口を開くことを待ち望んでいたが、同時にずっと思考の波に捕われていてほしくもあった。

斯くして審判は下る。

「言葉が出てこない」

いつも通りだ。待つ。

「私が別れるっていったら別れる?」

「別れる」

「それが嫌だ」

彼女はここからずっと言葉にできないと悩みながら何かと戦っていた。本音が口から出たのは2時間後だった。僕は待ち疲れてたのと空腹で逆切れをしていた。恥の上塗りも甚だしい。

「悔しい」

普段じゃ絶対聞かないであろう言葉から始まった感情の吐露は私を容赦なく打ちのめす。

勝手に自分の携われない所で別れるかもという決断を下しているのが悔しい。3年間付き合って信頼していたのは自分だけだったと思った。私って君の人生に必要ある?〜だから〜するみたいに、全部論理的に考えるのが嫌だ。私が別れるっていったら別れると即答するのも嫌だ。

彼女は急に並び立てる。一つ一つが鮮烈で全部正しい感情だと思えた。自分が間違った判断をしたと思った部分を容赦なくついてくる。彼女はいつも大事な部分だけは絶対に外さない。そんな感嘆と同時に職場の先輩が恋愛にロジカルシンキングを持ち込むとろくでもない事になると言っていたのがフラッシュバックした。
ただ、なんとなく、

「うるせえ、好きだ。愛してる。本当ごめん」

そんな類いの事を口にして手を握ればこの場は収まる気がした。でもひどく薄情な対症療法な気がした。2時間もあれば思考は巡る。私は二度と同じ問題が起こらないようにより関係性を深める必要があると考えてたので、逆切れして問題をすり替えた。

彼女の意見に真っ向から回答はせず、問題の原点はお互いの信頼不足である。今まで以上に二人で信頼を深めるようこれから考えていこうよ!そんなことを喚いた気がする。勿論彼女は納得できていなかった。

ふと時計を見ると終電が近い。4時間近く話していたようだ。嫌気がさして今日はお開きにしようと僕らは慣れ親しんだ有楽町線を待つ。勿論気まずい。頭の中がぐちゃぐちゃだった。

彼女がポツリという。

「それでも一言欲しかった」

自分は恋愛マスターに一生なれそうにはない。
ガツンと頭を殴られた感覚だ。僕はなんと答えたかな。言い訳をしたことだけは確かだ。

 

次は○○。○○です。お荷物のお忘れがないよう気をつけてご降車ください。

彼女の最寄り駅の名前を車掌がいつものテンションでアナウンスする。

「またね」

自分に精一杯な私はそう言いながら横を見やる。電車に乗ってから始めて見た彼女はこっちを見ていて一目でわかるくらい瞼は震えていた。

間違えていた。どうして好きだよって伝えてあげなかったんだろう。彼女もずっと不安と戦っている。
やる方ない気持ちになって瞬間的に腕をとった。

この時になってくそみたいなプライドが自分と彼女の最適解を導く時の邪魔になると身を以て知った。

ドアは閉まる。頭は痛い。つい目頭を押さえてしまう。自分がわからない。でもこれで正しかったという確信はあった。あそこで腕を掴まなかったら僕らの関係は終わっていた気がする。

私の最寄り駅がやってくる。

ここは池袋以上にホームタウンだ。僕らは安心感からか空腹が絶頂な事を知る。すぐに駅近の吉野家に入る。二人して貪るように食べた。本当あっという間に食べ終わって彼女自身もビックリしていた。ふと我にかえると私は空腹で本当にイライラしていたことに気付いた。申し訳ない。

頭が正常になれば、脳みそはあるべき未来をたたき出す。

 

家に帰ると、本当に拍子抜けするくらい仲直りができた。

正直に聞いた。彼女に「金がなくても愛してくれるか?」を。

勿論彼女は金がなければ愛してくれない女だった。知っていた。以前から彼女は回答に近い事を言っていた。

彼女は改めて口にした。

「私と子供が食べて住んでいけるくらいは稼いで。それ以上は自分でやる」

この人が普通の人が幸せを望むのと同じくらいありふれた望みを言う人間だってことは知っていたはずなのに。

間抜けな私は意味もないプライドのために彼女に多大なる迷惑をかけた。「お金に関することを彼女に問うのはダサい、男は黙って稼ぐのがイキ」みたいな男のちっさいちっさいプライドから始まった事件はようやく収束をする。

彼女は私に変わって欲しいことがあるかと聞いてきた。

「痩せて」
私は心底恩知らずなのだ。
「あと勤勉でいて欲しい、できることを増やし続ける人間でいて欲しい」
私は心底、世の中は祖母と弟を見習い勤勉と節制にまみれればいいと思う。

僕がズレた事を言いつつ、改めて許しを請うと彼女は代わりにと条件を出してきた。

「お腹が空いた時に不機嫌にならないこと」
「ラインはきたら次の日までに返すこと」
「一月に一回仕事の事を話すこと」

「もし、私と長く付き合う気があるなら、仕事にちゃんと復帰できたら二人のための貯金を始める事」

彼女は大切な事は絶対に外さない。

「金がなくても愛してくれるか」の質問は男の本心ではあるが無意味だ。人を家族を愛していくならお金は必要なのだ。叶うはずもない。だけど、なんとも気持ちのいい答えがある問いだろうかと思う。

「たったそれだけ?」

彼女には絶対敵わない。私は強がって問う。

「それだけ」

彼女の簡素な言葉を最後に子気味よく問題は吹っ飛んでいった。
代わりに転がり込んでくるこの感情を人は何と呼んでいたっけ。

2017/7/23 ロマンチストサラリーマン

 

 

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